写真館にはスタジオがある。そのスタジオに入る前に待合室がある。待合室にはたくさんの鏡があり、メークをしたり、メークを直したり、また、着付けをしたり、着付けを直したりするための撮影前の準備室である。
その待合室を朝がた掃除機をかけていた時のことである。その部屋は部屋の一部に畳が敷いてあり、畳の上を掃除しながら襖を一枚サッと開けた思わず瞬間どきりとした。こんなところに他人が立っていたのである。
その瞬間の印象は、(たいして若くもない奴がオモシロクなさそうな顔をして立っていた)だった。
そしてすぐに気がついた、それは鏡に映った自分の姿だったことを。こんなところに自分とは思っていない、知らない本当の自分がいたんだと。