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平凡の成り立ち

こんなことがあった。

自宅から仕事場へ通うわずか数分の道のり、

いつも、いつものように同じ道を歩き、

その家の角を曲がって行く。

その家は、木造二階建で季節は冬。

軒先には太いつららが何本もたれ下がっていた。

その日は暖かい日だったのか、

僕の歩く十数メートル先で、

ドスーンと大きな音を立てて、その家の屋根から、つらら群は落ちた。

そのとき、こんなふうに思った。

あと十秒家を早く出たら、命中したかもしれない。

いや、その十秒遅らせる理由が何かあったろうかと。

そうふり返ってみると、なんとズバリあったのだ。

玄関を出る時、妻と幼い子供に手を振って出かけたが、

めずらしく子供がぐずっていたので、数歩戻り、

僕は、子供の頭を撫でてから、再び出かけ直したのだった。

立ち止まり、その距離と時間を確かめてみると、ピタリ一致した。

不思議な何かを感じざるを得ないが、

案外、こういう平凡な日常も、奇跡の連続で成り立っているのかもしれない。

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