写真館の正面の外壁には,右側には、大きな丸い輪の形をした物と、
左側には、細長いスチール製の平板が、29本四角く並んでいる。
この細長い平板は、1本づつづれて波が打ってあり、
並べると、右側に向かってその波が登っているように見える。
この建物(写真館)は平成元年の十二月に完成したのだが、
当時、これをデザインした人に、この意味を訊いてみた。
s氏は「時代の波です」と答えた。
平板29本の波が右肩上がりに上昇しているので、
「昇り調子の波ですね」と僕は言った。
「そうです」と答えてくれたかは忘れたが、
その29本の平板1本を1年とすると、
最後は平成二十九年ということになる。
〈その平成二十九年まで写真館を続けていられたら、頑張ってきたと思えるだろうか〉
と、当時三十三才の自分は自問していた。
僕は〈思える〉と感じた。
現在,平成二十六年十一月二十九日。
時代の波のように、決して右肩上がりではなかったが、
いろいろと写真を通しての出会いがあり、
いろいろな経験をこれまでさせてもらってきた。
もちろん、まだその先も続くのだろうが、
平成元年十二月の、ささやかな自問自答が、
今でも「時代の波」を眺めると思い出すのである。